第12話 亀裂

答えはすでに決まっていた

お父さんとお母さん、どちらか選べと言われたら100対0でお母さんを選ぶ

ただ、友達から離れるのが嫌だった

転校したら友達できるか不安でもあった

名字も変わるのも受け入れられなくて、ここ地元、飯野川に残ることを決めていた


「飯野川に残る」
弟も同じ事を言った

お母さんにはすごい申し訳なかった

お母さんにはいつも甘えてばかりいて絶対着いてくると思っていただろう

子供の僕でもそれは分かっていた

お母さんは
「本当にいいのね?」
とやさしく言う

僕は
「うん‼」
と笑顔で返す

それには心配しなくて大丈夫という意味も込めていた

それを聞くとお母さんは車で荷物を何も持たず出ていった



それから料理以外の家事はだいたいは僕がやることになった

朝起きて廊下を拭き、風呂掃除をして洗濯機を回す
それから学校行って帰ってから洗濯物をたたみご飯食べ終われば皿洗いと米研ぎもした

めんどくさいってのはあったが全然苦ではなかった

離婚後お母さんと2回遊びに行った

家に電話がかかってきてその日の都合はどうか聞く感じでやっていた

ただ、遊びに行っていいのか気まずくてこの頃から人の心を変に読むようになった


ある日、誕生日が近くなると電話がかかってきた

お母さんの方のおばあさんからだった

「誕生日何か欲しいのある?」
と聞かれた

悩んだ末
「うーん…自転車‼」
と言う

するとおじいさんが
「自転車欲しいのか?それはこっちで買うから」
と言われ電話をかわり断った

見えない繋がりの亀裂がすごく感じた

それからまたお母さんから電話がかかってくるとお父さんが間になって今度の日曜日お母さんのところに遊びに行く?と言われるが嫌な感じが漂っていたので僕は
「その日用事があるから行かない」
と嘘を言った

それから電話がかかってくることは二度となくなった